特集 衛生行政を担う人材―獣医師・薬剤師
戦前の衛生行政における獣医師・薬剤師の役割
横田 陽子
1
1立命館大学生存学研究センター
pp.702-705
発行日 2013年9月15日
Published Date 2013/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102827
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戦前の中央・地方の衛生行政組織
戦前の日本において,衛生行政に従事する技術者には,医師,薬剤師および獣医師がいた.このなかで医師は,その創設期に主導的役割を果たし,また明治期から戦前の昭和期を通じて,まずコレラ,ペストが,後に結核,腸チフスなど伝染病対策が重視されたこともあり,衛生行政の技術者のなかで主導権を堅持した.一方,衛生行政には伝染病などの対人以外に対物分野もあり,これらは薬剤師・獣医師が担った.ここでは戦前期の衛生行政のなかで周辺に位置付けられる業務に従事した,薬剤師・獣医師を中心に述べる.
戦前の衛生行政の組織機構を概観しておくと,中央で衛生行政を担当したのは,1875年創設の内務省衛生局である.内務省(1873年創設)は内政全般を管掌した中央官庁であり,地方事務を専管する県治局と警察行政を司る警保局がその中心であって,衛生局は内務省の一隅を占めるにすぎなかった.1938年に至り,内務省衛生局と同外局の社会局が統合されて旧厚生省が創設される.
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