映画の時間
—何も知らなかった私に罪はない.—ゲッベルスと私
桜山 豊夫
pp.575
発行日 2018年7月15日
Published Date 2018/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208935
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ゲッベルスはナチス・ドイツのヒトラー政権下で宣伝担当大臣を務め,ベルリン陥落の日までナチスの体制を支え続けました.今月ご紹介する「ゲッベルスと私」は,彼に秘書として仕えたブルンヒルデ・ポムゼルの長時間に及ぶインタビューを基にしたドキュメンタリー映画です.インタビューが撮影された当時,ポムゼルは103歳でした.彼女は103歳とは思えないほど,しっかりとした口調で当時を振り返ります.複数のカメラが,彼女の深い皺に歴史の真実が刻まれているかのような迫力ある映像を作り出しています.
1911年生まれの彼女はゲッベルスの秘書になる前は,ユダヤ人の弁護士であるゴルトベルク博士の事務所で働いていました.1930年代になってナチスが台頭するとともにゴルトベルク博士の仕事は減り,恋人の紹介でナチス党員の作家ブライ氏のタイピストの仕事と掛け持ちするようになります.生活のためにはユダヤもナチスも関係なかったのでしょう.そのブライ氏の紹介でナチス党員になり,より待遇の良い放送局の秘書に就くことができました.さらに,速記の腕を見込まれて宣伝省に転職します.
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