映画の時間
—めくるたびにあふれる,真実と愛—ローズの秘密の頁(ページ)
桜山 豊夫
pp.179
発行日 2018年2月15日
Published Date 2018/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208841
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現代と呼ぶには,やや古めかしくも感じられる時代,1980年代後半でしょうか,アイルランド西部にある精神科の病院が老朽化のため閉鎖されることになり,入院患者の転院のための診察を依頼された高名な精神科医スティーヴン・グリーン医師が,そこを訪れるところから映画は始まります.グリーン医師が診察するのは,第二次世界大戦中から40年余にわたり入院生活を送っているローズ・F・クリア(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)です.彼女は戦時中に自らの手で,「赤ん坊」を殺害し,精神障害犯罪者としてこの病院に収容されています.しかし,彼女自身は赤ん坊殺しの罪を否定しており,自身の姓は「クリア」ではなく「マクナルティ」だと言い張ります.その様子は,彼がこれまで経験してきた一般的な精神科の患者とは異なる感じを受けます.ローズは1冊の聖書を大事にしており,その中に,看護人たちに悟られないように密かに日記をしたためていました.彼女は,その聖書にかかれた秘密の日記を辿りながら自身の半生を語りはじめます…….
時代は1940年代のアイルランドに移ります.若き日のローズ(ルーニー・マーラ)は戦時下のため伯母を頼って田舎町に疎開してきます.若くて魅力的なローズは,町の男性の注目の的です.ローズは偶然のことから,町の教会の若き司祭,ゴーント神父と知り合います.神父は彼女に興味を抱く反面,男たちを惹きつけるその魅力に危険な雰囲気を感じます.叔母は彼女を山奥のコテージに追いやります.
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