特集 妊娠中毒症--病態理解から看護へ
妊娠中毒症の病態をめくる最近の考え方
古橋 信晃
1
1東北大学医学部産科婦人科学教室
pp.642-649
発行日 1984年8月25日
Published Date 1984/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206494
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はじめに
妊娠中毒症には,古くより学説の疾患,分類の学問といわれるほど多くの学説・分類があり,現在でも論議が絶えない。一方,臨床における診断学の発達,臨床検査技術の向上によって,以前には他覚的・自覚的臨床症状でのみとらえられていた妊娠中毒症の病態が,的確な臨床検査によってかなり明確に把握されるようになった。それに伴って従来の妊娠中毒症に関する概念と異なった概念をもって,新しく妊娠中毒症を考えてみることが産科の重要な問題の1つとなってきた。さらに,従来の妊娠中毒症の診断・治療・保健指導などは母体を中心に進められてきた。しかるに,妊娠中毒症の児に対する影響は大きく,胎児についても同様の配慮が重要であることが認識されるようになった。昭和55年に日本産科婦人科学会内にあらたに妊娠中毒症問題委員会(委員長・鈴木雅洲)が発足したのもこれらの理由によるものと思われる。
一方,妊娠中毒症の病態として,子宮—胎盤血流量の減少と全身性の血管れん縮とが中心であることが確認されつつある。本稿ではこれら最近の妊娠中毒症の病態をめぐる考え方について解説し,また妊娠中毒症をめぐる概念の変化についても言及する。
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