特集 地球温暖化対策—2020年以降の新たな国際枠組み
気候変動対策に対する日米の取り組み
山岸 尚之
1
1WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)気候変動・エネルギーグループ
pp.1002-1007
発行日 2017年12月15日
Published Date 2017/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208796
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はじめに
2015年のパリ協定は今世紀後半に世界を事実上,“脱炭素化”していく方向を打ち出した.その大きな目標に向かって各国は国別目標(nationally determined contributions:NDC)と呼ばれる目標をそれぞれの国情に合わせて作り,実施することが義務になっている.2017年8月の時点で,152カ国が国別目標を国連の登録簿に登録している.
わが国と米国はともにこの152カ国の中に含まれるが,提出後の対応は分かれている.表11)に,わが国,米国それぞれのNDCに含まれる温室効果ガス排出量削減目標を示す.わが国はNDCを提出した後の2016年5月に「地球温暖化対策実行計画」を閣議決定し,少なくとも目標達成の意思を示した.一方,米国のトランプ政権は2017年6月にパリ協定を離脱することを宣言した.後述するように,それに先立って発表された大統領令では,オバマ政権時に整備された政策を覆そうという意思が明確に表れている.トランプ政権の大統領令が完遂されれば,米国がオバマ政権時に掲げたNDCはおそらく達成されない.
ただし,米国がオバマ政権時に導入した政策の中には,わが国が学ぶべきものも含まれている.また,米国では,カリフォルニア州の取り組みに代表されるように,連邦政府レベルでの動向のみが全てではない.
本稿では,わが国,米国の取り組みをそれぞれ概観し,わが国の政策強化に向けての展望を示す.
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