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高潮や洪水,熱中症などによる生命の危険,住居や財産が脅かされる被害が現実化しており,温暖化問題はすでに人権問題の域に入ったと言えるのではないか.私の住む京都では,この夏に猛暑日(日最高気温35℃以上)が21日もあった.全国の2007年中の熱中症死者は904人に及び,今年はさらに増加していよう.局地的豪雨による生命や財産被害も各地で発生している.IPCC(国連気候変動パネル)の将来予測とともに,現実の温暖化の進行を目の当たりにするようになり,気候の異変が取り返しのつかないところに至る前に,地球温暖化を人の生存に安全なレベルで止めていく必要があるとの認識が,近年,急速に世界で高まっている.そのためには,温室効果ガスの排出を削減しなければならない.G8サミットでの主要テーマとされたように,地球温暖化対策は今日の地球規模での緊急の政治課題であり,私たち市民にとっても課題である.20世紀型の資源とエネルギーを大量に消費する生産と消費のパターンから,低炭素社会への転換は待ったなし.産業構造を低炭素産業に転換していくと同時に,消費者の意識や行動でも転換が求められている.大量生産・大量消費・大量廃棄からの脱却には,消費者の意識改革も不可欠である.
温暖化に対応するには地球規模での取り組みと同時に,地域での足元の排出削減の実効性が不可欠である.そのいずれにおいても,政策決定プロセスが経済界と行政だけで行われるのではなく,気候変動の被害を受けている市民や,今はまだ発言できない将来世代の声が反映されることが必須である.環境NGOはそれらの代弁者でもある.
地球規模で温暖化対策が政治的焦点となってきたのは1980年代後半からであるが,92年の地球サミットを機に,市民の参加の必要性が指摘されてきた.NGOの気候変動政策への関与は92年地球サミットに始まり,京都議定書の採択,発効をめぐるプロセスを経て,今まさに進行している気候の安定,低炭素社会への国際合意と国内削減政策づくりに参加している.
本稿では主に,日本のNGOの気候フォーラムとこの活動を継承した気候ネットワークの活動を中心に,世界各国のNGOの動きも紹介する.
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