コーヒーブレイク
誤記の被害
T.O.
pp.316
発行日 1986年4月1日
Published Date 1986/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203622
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ある雑誌社より,読者からの質問に答えてほしいと頼まれた.内容は,血液寒天上に発育したブドウ球菌の集落間に認められた溶血環に関することであった.質問状と問題の血液寒天培地のカラースライドが添付されていた.スライドの様子では,ブドウ球菌の落集間にCAMPテストの陽性所見を思わせる現象が認められた.
CAMPテストは,B群溶レン菌の同定検査としてよく知られたテストである.昨年1月に医学書院から『病原細菌の生化学的検査法』と題する本が出版された.これはJ. F. MacFaddin著 "BiochemicalTest for Identification of Medical Bactria" の日本語訳である.この本は細菌の生化学的性状について詳細に記されている.特に化学反応の原理については,日ごろ目にする微生物の参考書には類を見ない書といえる.早速,日本語訳のCAMPテストのところを開いてみた.私の今まで目にした本では「CAMP」と記されていたのであるが,本書では「cAMP」と記され,「キャンプ」ではなく「サイクリックAMP」テストとある.今までは人名にちなんでつけられたものと思っていたが,「サイクリックAMP」であったのかと短絡に受け入れてしまった.そこで読者の質問の答えの中にもこの言葉を使用したところ,訳書の先生より手紙をいただき「サイクリックAMP」は誤訳であるとのこと.早速,原本(第2版,1980)を見たところ「CAMP」とあり,これはChristie,Atkins,Munch-Petersenの頭文字で,これら三名の研究者の名にちなんでつけられたことが記されていた.
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