特集 災害時の公衆衛生活動
都道府県における災害時の公衆衛生支援体制づくりの現状と課題
田上 豊資
1
1高知県中央東福祉保健所
pp.643-647
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208502
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東日本大震災は,広域複合災害であり,特に津波と原発事故による被害が甚大で,ライフライン,通信,物流,アクセス等の社会インフラが壊滅したことが特徴である.そのため長期間の劣悪な環境での避難生活に起因する二次的な健康被害とそれに対応する公衆衛生対策に注目が集まった.加えて,多くの市町村や保健所の庁舎が全壊もしくは使用不能になるなどして市町村や保健所の指揮調整機能が混乱してニーズとリソース,支援と受援がミスマッチしたことにより,限られた資源の有効活用や被災状況に応じた支援資源の適正配分ができないことが課題となった.
こうした教訓を受けて全国衛生部長会の下に専門委員会を設置し,都道府県や市町村の指揮調整機能を支援する「災害時健康危機管理支援チーム(以下,DHEAT:Disaster Health Emergency Assistance Team)」の制度化に向けた検討をしている最中に熊本地震が発生した.東日本大震災より自治体庁舎の被災が少なく,ライフライン等が早期に復旧したにもかかわらず,自治体の指揮調整機能の混乱によるニーズとリソース,支援と受援のミスマッチが再び大きな課題となった.さらに,東日本大震災の時より多くの種類の支援チームが入り,DHEATを意識した支援も実施されるなどして,新たな課題も浮き彫りになった.
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