予防と臨床のはざまで
産業保健のプレゼンス
福田 洋
1
1順天堂大学医学部総合診療科
pp.451
発行日 2016年6月15日
Published Date 2016/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208453
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さんぽ会(多職種産業保健スタッフの研究会,http://sanpokai.umin.jp/)は,「産業保健のプレゼンス」というテーマで3月10日に月例会を行いました.プレゼンスとは,やや保健・医療分野ではあまり耳にしない言葉かもしれませんが,政治・軍事的にはニュースなどで「G20におけるA国のプレゼンス」という形でよく耳にする言葉です.直訳すると「存在感」という意味ですが,今回は産業保健という業務や,産業医や産業保健職の「存在感」について考えてみようという趣旨です.
このテーマは,企業の健康管理室の立ち上げに関わったある保健師さんの体験から取り上げることになりました.数年勤めた病院の臨床業務から,半年間の週1日のアルバイトを経て,健康管理室の立ち上げに関わった体験がご本人から語られました.入社早々,風疹が大流行したり,メンタルヘルスの復職ケースに苦労したり,産業保健体制が不十分な環境の中で,臨床とは全く違う「働く人の健康」に関わる仕事から得られた新鮮な驚き,苦労,達成感などが語られました.それでも健康管理室の立ち上げを通じ,定期健診の受診率が100%になったことや,疾病休業者数や健保組合の傷病手当金をもらう人が減り,役員から評価されたことが自分のプレゼンスかもしれない,と控えめに語られました.
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