特集 産業保健のトピックス
職場のメンタルヘルス対策の新展開—ストレスチェック導入をめぐる議論を含めて
廣 尚典
1
1産業医科大学産業生態科学研究所精神保健学
pp.269-273
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208404
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
労働者のメンタルヘルスの現状
労働者のメンタルヘルスは,産業保健の中でも,特に社会の強い関心を集めている領域である.メンタルヘルス不調(定義については後述する)を有する労働者の顕著な増加や不調の多様化,さらには精神障害の労災認定例の増加などが,近年の変化として認められる.
メンタルヘルス不調の多様化に関しては,統合失調症およびうつ病の軽症例,Ⅱ型双極性障害,発達障害といった,以前には指摘されることの少なかった病像(事例化の形)が増えていることが指摘されている1).これらの中には,社会あるいは職場環境の変化によって,事例化してきた例もあれば,個人の労働や生き方についての価値観の変化,生育歴および教育環境の影響によるところが大きいと考えられる例もある.精神科治療や休養により症状が改善しても,職場復帰(復職)後それほど勤務を続けないうちに再燃,再発をきたし,職場不適応に陥る事態を繰り返す例も少なくない2).精神障害の併存が少なからずみられることについても,報告が多くなっている3).
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.