特集 食品の安全と安心をめぐる話題
食品トレーサビリティシステム
福田 伊津子
1
,
大澤 朗
1
1神戸大学大学院農学研究科 食の安全・安心科学センター
pp.753-757
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208297
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トレーサビリティの目的と概要
食の安全性に対する不安要因としては,食品・農畜水産物が病原体(異常プリオン,鳥インフルエンザ,SARS,腸管出血性大腸菌O157:H7,コレラ等)や有害化学物質(農薬,抗生物質,ダイオキシン類等)によって汚染されること,また食品・農畜水産物の規格が偽装表示されること等が挙げられる.現在,わが国は食の供給を海外に強く依存しているが,これに加えて複雑多岐な流通システムによって「農場から食卓まで」のフードチェーン・サプライチェーンにおける介在者の顔や食品・農畜水産物の取り扱われ方がほとんど見えない状況にある.このような背景から,私たちの食卓に届けられる食品・農畜水産物の安全性について不安が増大している.
食を取り巻く不安や危害が増大する中で,食品の追跡可能性(トレーサビリティ)を確保することは,食品による事故を未然に防ぐことや事故発生時に迅速に対応できるほか,表示の信頼性が向上することが期待され,私たちの食卓に届けられる食品・農畜水産物の安全性と信頼性の確保につながると考えられる.欧州連合(EU)やアメリカではすでに,全ての食品にトレーサビリティが実施されている.
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