特集 臨床検査のための情報処理技術の進歩
1章 臨床検査の技術的評価の考え方と統計処理法
1. トレーサビリティと不確かさの概念
細萱 茂実
1
,
尾崎 由基男
2
Shigemi HOSOGAYA
1
,
Yukio OZAKI
2
1山梨大学医学部附属病院検査部
2山梨大学医学部臨床検査医学
キーワード:
トレーサビリティ
,
不確かさ
,
標準化
,
分散分析
Keyword:
トレーサビリティ
,
不確かさ
,
標準化
,
分散分析
pp.1283-1288
発行日 2005年11月30日
Published Date 2005/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100302
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はじめに
測定による値の付与は,測定の対象に対する測定体系が確立されている場合に整合性をもって論じることができる.ここで言う測定体系とは,一般の計測または計量の分野のトレーサビリティ連鎖に対応する.この逆の流れを校正の階層段階と言い,測定の対象である特定の量すなわち測定量に関する基準測定操作法と標準物質で構成され,上位の標準から測定量の値が伝達され,また,その不確かさが受け継がれる.この階層の中で,ある水準における測定の結果の信頼性は不確かさによって定量的に表現される.
不確かさの解析は国際標準化機構(ISO)が中心となり,編集した国際文書「計測の不確かさ表現に関するガイド(GUM)」1)に基本的に従う.この新しい概念は法定計量や応用物理など計測に関係する多くの国際組織で用いられ,分析化学の分野でも分析値に不確かさを併記して値の信頼性を示すことが国際ルールとなりつつある.
ここではトレーサビリティ連鎖と不確かさに関する基本的な考え方,日常検査値の不確かさ,標準物質の認証値や管理物質の表示値の不確かさ,また,分析法の校正(キャリブレーション)の不確かさなど,臨床検査に関連する不確かさ評価法を中心に述べる.
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