- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
昨年2014年は米国公衆衛生総監(Surgeon General)が喫煙と健康に関する報告書1)を1964年に発表してから50周年にあたる.この報告は喫煙の健康影響について体系的包括的にまとめた初めての報告である.この報告で喫煙は肺がんと喉頭がんそして気管支炎の原因であることが指摘されたことを受けて,翌1965年タバコの箱の警告文書の印刷,放送メディアでのタバコ広告の禁止等を定めた法律ができるなど本格的なタバコ対策が始まった.この報告は関係する7千余の論文を検討しているが,そのなかでも英国のDollらの貢献は大きい.はじめDollとHill2)はロンドンの20の病院の協力を得て,肺がん患者,胃がんと大腸がんの患者および肺がん患者と性・年齢が同じがん以外の患者を登録しその喫煙状況を調べるという,今でいう症例対象研究を行った.その結果,肺がん患者中の非喫煙者は男性はわずか0.3%,女性は31.7%に過ぎなかったのに対し,対照群では男性4.2%,女性53.3%であった.喫煙者については,肺がん患者は高度喫煙者が多く,男性患者の26.0%,女性患者の14.6%は1日25本以上喫煙するのに対して,対照群では男性の13.5%,女性の0%が高度喫煙者であった2).
この結果を受けて,1951年英国医師会員4万人に対して喫煙状況などの調査が行われ34,440人が回答した.その後の継続した観察で調査対象者中の死亡状況が順次公表されているが,例えば20年後の状況について報告した1976年のDollとPetoの論文3)では,生涯非喫煙の男性に比べ喫煙男性は70歳未満では死亡率が2倍と報告されている.原因別で見ると,心疾患,肺がん,COPD(慢性閉塞性肺疾患),その他の血管疾患が多かった.また途中で禁煙することにより,肺がんのリスクは減っており,喫煙と肺がんの因果関係を確証する結果が得られている.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.