綜説
最近のウイルスの話題—タバコモザイク・ウイルスの再構成
松本 稔
1
1東京大学伝染病研究所
pp.22-29
発行日 1957年1月15日
Published Date 1957/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201779
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ウイルス学の多くの最近の話題の中から,タバコモザイク・ウイルスの再構成の問題をとりあげてのべてみたい。これはウイルスの本質的なものにふれていると思われるからである。
ウイルスの中でその粒子の化学組成や構造のもつともよく研究されているのはタバコモザイク・ウイルス(TMV)である。よくしられているように,このウイルス粒子は直径15mμ,長さ300mμの棒状のもので,蛋白質とリボ核酸(RNA)とからなつている。このような粒子がひとたび感受性細胞にであうと,細胞内に侵入し,増殖し,もとと同様の多数のウイルス粒子ができてくるわけである。ウイルス粒子の発揮するこのような機能と,ウイルス粒子の構造との関係は,ウイルスの本質をつく大問題である。StanleyがTMVの精製結晶化に成功し,ウイルスの研究に新しい道をひらいて以来,この問題は,Stanleyをもふくめて,多くの研究者の興味の中心であつた。
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