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5月13〜16日に,車谷典男学会長(奈良県立医科大学地域健康医学講座教授)のもと,第88回日本産業衛生学会(大阪,http://convention.jtbcom.co.jp/jsoh88)が行われました.大阪駅近接の便利で新しいグランドフロントを会場に,全国から3,000人以上が参加,524演題の登録があり,どの会場も満員でした.テーマは「Quality of Working Life―グローバル化と労働形態多様化の中での展望」.企業活動は国境を越え,日本人が海外で働くことも,外国の方が日本で働くことも普通になりつつあります.また少子高齢化や健康格差のさらなる進行により,長時間を過ごす場である職域の環境と生活がさらに重要になっています.6月に韓国で予定されているICOH(国際産業衛生学会)のテーマが,“Global Harmony for Occupational Health:Bridge the World'”であることを考えると,国際時流にも合致したテーマと感じました.とてもすべての内容をダイジェストできませんが,参加したメインシンポジウム,教育講演,主催した健康教育・ヘルスプロモーション研究会を中心にインプレッションをお伝えします.
メインシンポジウムA「平成時代25年間の産業保健の動向と今後の展望」では,山田裕一先生,伊藤正人先生を座長に,私自身も大変お世話になっている超重鎮の先生方による感慨深い講演が続きました.山田誠二先生からは労働安全衛生法の罰則規定の重さからその思想を考えるお話,三觜明先生からはTHPの歴史から今後求められる職域の健康づくりについて,大久保利晃先生からは学会専門医,医師会認定医,産業医科大学設立,厚生労働省の動きなどを時系列で触れながら産業医の資格制度の確立の経緯と将来展望について,東敏昭先生からは1.2ジクロロプロパン,石綿の例などをあげながら化学物質管理の経過と今後の課題について,時代と共に取り組まれた先生方でなければ話せない貴重なお話,スライドの連続でした.最後は演者が登壇してディスカッションの時間があり,今後の産業保健の方向性や求められる産業医の専門性についてのお話がありました.大久保先生から「産業医の専門性は何か?」に関して「マネジメント,アプライする専門家である」という発言があり,総合診療の分野でジェネラリストとして業務を行っている私にとって,非常に勇気付けられるお言葉でした.
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