映画の時間
—生きていく.私のいまを抱きしめて.—マンゴーと赤い車椅子
桜山 豊夫
pp.67
発行日 2015年1月15日
Published Date 2015/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208106
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脊髄損傷の患者が主人公の映画としてはラリー・ピアース監督の「あの空に太陽が」(1974,米)が記憶に残ります.現在のところ脊髄神経は再生不能と言われ,それが損傷を受けると,損傷部位より遠位の感覚,運動能力が失われ回復は望めません.今月ご紹介する「マンゴーと赤い車椅子」では,主人公の彩夏がリハビリテーション病院に入院し,Th10の損傷と診断されます.「あの空に太陽が」の主人公はC4の損傷でしたから,それに比べれば軽症でしょうか.しかし下半身不随で車椅子生活は必至です.主人公の彩夏は看護師として働いていたようで,事態の重大性は十分に認識しているようですが,それでもなお病状を素直に受け入れることはできません.絶望の淵で,自らを直視できない主人公を,秋元才加が見事に演じています.
新しく入院してきた彼女を,リハビリテーション病院に入院している車椅子仲間の患者たちが励まそうと,いろいろと話しかけてきます.彩夏を勝手に「彩夏姉さん」と呼んで慕ってくる元気で明るい高校生の女の子,車椅子で器用に院内を暴走する少年,脳卒中後遺症の言語障害で夫に助けられながら言語リハに励む女性,などなど,個性的な入院患者がそろっています.彼らと触れ合うなかで,彩夏の頑なな態度もいつしか緩んできますが….
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