特集 くすりと公衆衛生
医薬品の安全性
浜 六郎
1
Rokuro HAMA
1
1阪南中央病院内科
pp.364-371
発行日 1989年6月15日
Published Date 1989/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207946
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■はじめに
医薬品が今日の医療に果たしている役割は大きい.医師は多くの薬剤を駆使することにより,患者の治療が以前よりはるかに容易に行えるようになってきた.しかし,産業や経済の急速な発展が一方で公害をもたらしたように,医薬品についてもサリドマイド,スモン,コラルジル,クロロキン,筋肉注射による筋短縮症など,日本では世界に類を見ない規模の悲惨な「薬害事件」を数多く経験した.これらの薬害事件は人類,特に私たち日本人の共有の歴史的教訓というべきものである.多くの貴い犠牲を単なる犠牲に終わらせないために,「安全性確保」のための具体的対策が必要であることがだれの目にも明らかとなった.
「医薬はもともと人間にとって異物であって,たまたま一定の疾病の治療に役立つ性質が見いだされたに過ぎず,したがって同時に好ましくない性質や働きがこれに伴うことは避け難いことである.したがって薬害を防ぐには,①物質としてできるだけ有害である可能性の少ない医薬品の開発に努めること,②それでもなお残っている有害の可能性については,できるだけ詳しい情報が与えられること,③その情報に基づいてできるだけ安全な使い方に努めること,④それでもなお残っているかもしれない未知の危険に対して常に警戒を怠らないこと,という4段構えの布陣が必要なのである」.
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