巻頭言
医薬品の安全性対策
上島 国利
1
1昭和大学精神医学教室
pp.4-5
発行日 1992年1月15日
Published Date 1992/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405903173
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先日ある若い女性から,脳腫瘍の疑いでMRI検査を受けたが,その結果が心配でたまらないという話を聞いた。検査の理由を問うと,身体不調の精査で高プロラクチン血症が判明したためという。処方を調べてみると予想どおり抗ドパミン作用により上部消化管の運動機能を正常化すると同時に強い制吐作用を示す消化管運動改善薬が長期に投与されていた。この薬剤は,制吐作用が優れており,嘔気を訴える女性などには,最近しばしば手軽に用いられている。その上,高プロラクチン血症には持続性ドパミン作動薬が投与されていた。当該消化管運動改善薬の能書には,内分泌系副作用として「まれにプロラクチンの上昇,乳汁分泌,女性化乳房……あらわれることがあるので,観察を十分に行い……」と記載されている。投与した内科医がこれらの副作用を知っていたら,嘔気消失後短期で投薬を打ち切ったであろうし,持続性ドパミン作用薬の投与も必要なかった。さらにMRIは高価で不必要な検査であり,何より脳腫瘍を心配した患者の苦悩は計り知れない。
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