特集 公衆衛生の課題と展望
成人・老人保健
内藤 雅子
1
,
根岸 龍雄
1
Masako NAITOH
1
,
Tatsuo NEGISHI
1
1東京大学医学部成人保健学教室
pp.155-157
発行日 1988年3月15日
Published Date 1988/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207634
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■はじめに
成人・老人保健の課題の模索,その保健管理の展望は,近い将来のわが国の人口構成,疾病・死亡構造,それらに対する医療資源および医療経済・保健・福祉などに関する情報を推測できれば可能となる.幸いなことに,そのためのてがかりは,先人の努力によって,世界でもまれな統計資料として多数残されている.それは,人口動態統計のみではない.第二次大戦後の統計とはいえ,受療率,有病率などや近年の医療経済および医療資源に関する各種の情報がある.
明治以降のわが国の進歩はきわめて急速であったし,現在もそれは継続している.このために,わが国民はその生まれ育った社会的環境によって,大きく異なる疾病・死亡構造および医療への対応を示すこととなった.数多くの疾患で,その死亡率の推移に明確なコホート現象が認められており,また受療率,有病率にも生年群別に特徴的な所見が認められている.これらの特徴を踏まえると,近い将来のわが国の成人ないし老人の生年群別人口,有病者数,受療者数,死亡数が推測されることとなる.これらの動向と,医療資源および医療経済・保険・福祉に関する諸情報との関係は,成人保健および老人保健の各種の問題点を浮彫りにし,その解決のための方法論の方向を思考させることとなる.
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