講座
栄養疫学—3.調査論をめぐって
豊川 裕之
1
Hiroyuki TOYOKAWA
1
1東京大学医学部保健学科疫学教室
pp.709-713
発行日 1987年10月15日
Published Date 1987/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207555
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■はじめに
栄養疫学研究は,一般疫学(general epidemiology)の研究と同様に,調査論と統計分析論の2本柱から成るので,調査論と分析論に分けて論述される.本講座でも,まず,調査論を取り上げることにするが,分析論については後述する.
栄養疫学は一般疫学の一分野であって,一般論に対する特殊疫学(specific epidemiology)である.たとえば,特殊疫学としては,感染症の疫学(epidemiology for infectious diseases),糖尿病の疫学(epidemiology for diabetes melitus),AIDSの疫学などであり,栄養疫学は,この感染症の疫学よりも広いことはあっても決して狭くはない守備範囲を持っている.確かに,感染症の疫学にはAIDSも対象の中に含まれるほどに広い守備範囲があるが,栄養疫学では脚気,壊血病,ペラグラ等の栄養欠乏症だけではなく,肥満,偏食,嗜好,食物摂取にとどまらず食品販売さえも研究の対象になるので,どうしても守備範囲は広大になる.したがって,その調査論もまた多岐にわたる.そのために,疫学調査論を詳しく個別の事項について記述することは本講座になじまないと考えられるので,疫学調査論の立場から一般論的に整理し,その後に方法論の一部を重点的に栄養疫学の立場から記述しよう.
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