特集 水と空気
環境保全の国際的動向—水と空気
橋本 道夫
1
Michio HASHIMOTO
1
1JICA北スマトラ地域保健対策国内委員会
pp.409-414
発行日 1987年6月15日
Published Date 1987/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207488
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■はじめに--国際的動向としての変遷
環境問題は本来地域的な問題として発生し,対応がなされて来た.しかし第二次大戦後の人口の増大と,都市化,工業化,エネルギー消費の増加は環境問題の規模を広げ複雑化して来た.特に国連が開発の十年間として謳っていた1960年代には先進工業国における都市化・工業化による大気汚染や水質汚染が各国の大きな問題として国際的に関心がもたれるようになって来た.国境を接する大陸の国々にあっては既にそれより以前から,国境地域の問題がそれぞれの国境を越えて生ずることがさけられないので,既に1920年代頃から大気や水の汚染の国際問題を生じて紛争や協定を結んで対応しているものもあったが,これは国際的な環境問題といっても地図の上では限られた範囲の原始的な段階のものであった.1960年代半ばから洋上を航行するオイルタンカーの海水油濁という国際的な広がりをもつ問題が顕在化した.
1968年スウェーデン政府はOECDの科学政策委員会の都市部会の特別会合をストックホルムで開催し,第二次大戦後スカンジナビア半島の諸国に酸性の降下物が年々増加し,森林や湖沼に徐々に変化が起こりつつあり,その原因はヨーロッパ諸国のエネルギー消費増大に伴って,硫黄酸化物を含んだ煙が季節風によってスカンジナビア半島の諸国に運ばれて降下していると発表した.
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