講座
ライフスタイルと健康—3.主観的健康とQuality of Life
森本 兼曩
1
Kanehisa MORIMOTO
1
1東京大学医学部公衆衛生学教室
pp.415-419
発行日 1987年6月15日
Published Date 1987/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207489
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医学・公衆衛生学をめぐる新しい研究課題として,単に平均寿命の延長や疾患の有無にとどまらず,生きがい感やQuality of Life(生活の質)を重要視し,それらを導入した新しい健康指標の開発がある.例えば筆者らが行った健康意識調査の結果1)を見た場合,全国民の2割の人々が,「あまり健康でない」との実感を持っており,しかもこの不健康感を持つ人の割合は,加齢とともに増加する(図1).この健康意識調査結果では,健康とは身体的なもののみならず,広義の心や精神的なものを含むと考えている人が90%以上であることから,現在におけるこれら総合的な健康度(決して疾病罹患率ではない)がどのような質を持ち,それが医学・公衆衛生学の課題としてどのような意味を持つのかは科学的な研究の対象とせねばならない.
医学・公衆衛生学の目的は,一個の人間が自分らしい生き方を望み,またそのために努力して生活していく状態を支援する状況をより良く提供すること,にあるはずである.勿論これらの阻害因子として健康破綻=疾病は最も重要なものであり,医学の現状が疾病医学を主体とせざるを得ない状況は認めるとしても,同時に将来に向けて「医学とは・公衆衛生学とは何か」を問いかける新しい研究活動が期待される.
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