特集 地域保健医療のすすめ方
プライマリ・ケアの展開
渡辺 淳
1
Kiyoshi WATANABE
1
1日本プライマリ・ケア学会
pp.741-746
発行日 1986年11月15日
Published Date 1986/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207367
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■はじめに
1.今までの地域保健医療のすすめ方
今まで日本の各地ですでにその県,その市で,地域保健医療計画に類するものが多数だされている.それらはこれからの地域保健医療像を述べているが,これらを読んですぐ気付くことは,①保健,医療の二極分化構造の基盤をそのままに策定されたものが多い,②中核総合病院の整備をうたうものが多い,③救急対策を別項として大きく取り扱っている,といったことである.これはわが国において,今まで国の行政がこうした方針で進められて来たためと思われる.本稿に与えられた紙数はあまりに僅かで,とてもこのことを一々裏づけている暇はないので省略する.
さて,今までの医療法では質の向上を旗じるしに,科学的にして適正な医療を行う場所として,病院を位置づけて,これを重視し,明らかに病院中心の医療を押し進めて来た.一方,保健については公衆衛生の立場から,保健所法に基づいて保健所を中心にこれを行い,保健と医療とを全く二元的に進めて来た,しかし今回の医療法の改正によると,この病院中心主義を改め,「計画医療」を行うことを中心に打ち出している.すなわち,医療を需要と供給の視点からとらえて,その釣合いをとることをねらいとしているのである.しかも今までと異なる著しい変化は,プライマリ・ケアの重視であり,「プライマリ・ケアを中心とした医療のシステム化の推進が必要」(医療計画策定指針)としているのである.
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