プライマリ・ケア
対談 プライマリ・ケアの現状と将来(その2)
渡辺 淳
1
,
本吉 鼎三
1淳正診療所
pp.252-254
発行日 1979年2月10日
Published Date 1979/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402215770
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
地域性ということの大切さ
本吉 プライマリ・ケアという場合,地域との結びつきが重要だと思いますが,地域との結びつきをどういう形で実践していったらいいのでしょう.
渡辺 老人医療が始まってから,たとえば岐阜県和良村の中野先生のように,脳溢血の発生率を減らそうという目標を立ててやっておられる先生がいる.中野先生が実際に農村を回ってみると,労働に寄与できる人,したがって若夫婦が南向きの一番いい部屋を占領している.卒中を起こしそうな,あるいは起こしたような年寄は,真っ暗な納戸の北向きの部屋に押し込められている.これはもう廃物だから,生産に関係ないからということで,これは一種のうば捨てですね,これは農村の昔からの風習でやっているわけです,むしろ若い人が北向きの部屋でいい.年寄や脳卒中を起こしたような人こそ,南向きの部屋でリハビリテーションをやりなさいと指導している.また食べ物だって指導していかなければ,脳卒中は減っていかない.またそれも,外からきていきなりいってもだめで,その土地に住んで同じものを食い,同じ言葉をしゃべり,あらゆる風俗習慣をともにしてはじめて医療の成果があがる.だから,ただ医療は医学を適用しさえすればいいというものじゃない,血が通った適用でなければならない.血を通わせるには,その土地に住みつくことです.それは地域の先生でないとできない.
Copyright © 1979, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.