特集 地域保健医療のすすめ方
地域保健医療と医学教育
前沢 政次
1
,
長嶺 敬彦
1
Masaji MAEZAWA
1
,
Takahiko NAGAMINE
1
1自治医科大学地域医療学教室
pp.736-740
発行日 1986年11月15日
Published Date 1986/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207365
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■はじめに
臨床医学の進歩は,臨床各科の専門細分化を助長し,人間を家庭や地域の一員として,全人的にアプローチすることを困難にした.一方,公衆衛生学的アプローチは地域社会をマスとしてとらえ,様々な試み(集団健診など)を行ってきたが,住民への個別的生活指導は,必ずしも十分とは言い難く,また予防から治療への継続性が保たれにくい面もあった.地域に密着した,予防からリハビリテーションまでの包括的医療の必要性が強く叫ばれるゆえんである.したがって地域保健医療の質の向上のためには,保健活動と医療との連携を重視することと同時に,従来の専門細分化した臨床医学や個別性・継続性に乏しい公衆衛生学的アプローチとは異なった,新しいアプローチも必要である1)(図).すなわち臨床的アプローチとしては,人間の臓器のみをみることではなく,身体的・精神的・社会的存在としての人間をみ,かつその家族やその人の住む地域社会にまで気配りをし,かつ予防・健康増進のための指導まで含めた医療でなければならない.この地域医療を担う医師は,第一線医療の担当者としての臨床的能力と共に,診療対象である地域社会全体の問題を考え,社会医学的アプローチ,予防医学的アプローチを駆使する能力を有することが必要であろう.このような新しいタイプの医師養成には,当然新しい医学教育が求められる.
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