衛生公衆衛生学史こぼれ話
33.遠藤培地
北 博正
1
1東京都環境科学研究所
pp.735
発行日 1986年11月15日
Published Date 1986/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207364
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終戦後しばらくして,チフス,パラチフスA,B,赤痢,コレラ菌等の消化器系伝染病の病原菌の鑑別にSS(Salmonella,Shigella),寒天培地が登場するまで,永年にわたって遠藤培地が広く用いられたが,この培地の考案者が日本人であることに気付かず,和文の論文でEndoと表現した先輩大家もおられたと聞いている.しかしこの培地の考案者,遠藤滋医師(1870〜1937)のことは意外に知られていない.氏は東北大医学部の前身,第二高等中学校医学部を卒業し,北里の創設した養生院の医員となり,診療,研究に従事し,のちに東京において開業した.
当時は腸チフス,パラチフスA,B,赤痢等が流行し,乳糖非分解性病原菌分離用の優秀な培地が求められていた.この目的のため,培地にフクシン(赤色色素)を加え,亜硫酸ソーダを加えると,フクシンは無色になる.大腸菌は乳糖を分解し,酸を形成し,大腸菌の集落は赤くなるが,上記の病原菌では赤くならないので鑑別可能となる.
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