文献考察
無煙たばこと口腔癌に関する文献考察—その疫学的評価
小川 浩
1
Hiroshi OGAWA
1
1愛知県がんセンター研究所疫学部
pp.773-778
発行日 1986年11月15日
Published Date 1986/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207372
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●はじめに
近年,喫煙の健康影響に関する知識の浸透に伴い,米国では,紙巻きたばこ喫煙習慣が衰退しつつある一方,無煙たばこ(smokeless tobacco)の消費が伸びてきている.とくに青少年の間にかぎたばこ口腔内使用(snuff dipping)の習慣が流行のきざしをみせ,その健康影響が憂慮されている1).
無煙たばこは噛みたばこ(chewing tobacco)とかぎたばこ(snuff)に大別され,かぎたばこはさらに乾燥かぎたばこ(dried snuff)と湿潤たばこ(moist snuff)に分けられる.かつて17世紀半ばより,粉末状のたばこに香料を混ぜた乾燥かぎたばこを鼻に吸い込む習慣が,ヨーロッパの上流社会や船乗りの間に流行したが,現在ではそのような使用法はまれで,一つまみのかぎたばこを歯肉と頬の間に挿入する口腔内使用が一般的である.紙巻きたばこ喫煙が主流の今日でも,米国南東部の地方ではこのような習慣が根強く残り,火を扱えない炭鉱,紡績,石油製造などの職場で働く人々や農夫の間で用いられている2).
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