衛生公衆衛生学史こぼれ話
20.別天師の最後
北 博正
1,2
1東京都環境科学研究所
2東京医科歯科大学
pp.111
発行日 1986年2月15日
Published Date 1986/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207209
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1899年,別天師はあらゆる公職を辞し,お気に入りの山荘に移り住んだが,大変元気で,標高差900mもある近所の山を,右膝に変形性関節炎があるにも拘わらず,しばしば登っており,また王宮内に与えられた彼の住居に至る122段の階段も苦にしなかった.しかし.肉体は強かったが,精神力の衰えはひどく,厭世観が強まる一方で.このころ彼は愛息2人,長女.さらに愛妻を失った上.彼の世話で王室薬局に勤めていた弟ミカエル(Michael)が気が変になり,精神病院に収容されるといった具合に,彼の家庭は目茶苦茶になり,彼の抑うつ状態はひどくなる一方で,周囲の者が頼んだ精神科医グラシヤイ(Grashey)のカウンセリシグも奏効しなかった.
この頃別天師は,持っていた拳銃で自殺を図ったが不発で失敗,そこで彼は新規に1挺を買い求めた.彼の友人で,門下の生理学老フォイトは別天師が買った拳銃をポケットに入れたのを見たという.その後,周囲の人々がどのくらい警戒態勢をとったかわからない.
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