特集 死と公衆衛生
医の倫理と死
高島 學司
1
Gakushi Takashima
1
1龍谷大学法学部
pp.544-548
発行日 1985年8月15日
Published Date 1985/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207097
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■問題の所在
およそ,人間の倫理は,良心のほかに社会の慣習やコンセンサスを基盤として,人間の行為や社会関係を支配するものであり,宗教・思想・政治・経済などの影響を受けながら,社会規範として機能しているといえよう.いわゆる医の倫理は,このような普遍的な倫理の延長上にあるのではなかろうか.しかし,科学技術の急激な進歩などから社会の価値観の多様化を招き,社会規範としてのこれまでの倫理そのものが問い直されつつある.すなわち,倫理規範もその基盤の変動に応じて,変化してゆく面と変化しない面があるということである.
医の倫理には,大別して,昔からの倫理的基準をもって足りるか,ときに顧みてその原則に戻ることが求められる場合,および未経験の新しく医学上発生した問題に対して,医師その他の医療関係者だけでなく広く専門外のものとともに,積極的に推進するか否定的な立場をとるか,その解答を求めて模索しなければならない場合とがあると考えられ,これらに沿って検討してみたい.
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