特集 小児の育成
小児疾患の変遷
鈴木 榮
1
Sakae SUZUKI
1
1名古屋大学(医・小児科)
pp.316-322
発行日 1984年5月15日
Published Date 1984/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206859
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■はじめに
小児医学の領域が拡大し,対象疾患の種類も頻度も変って来たことは,誰でも認めるところであろうが,同じ尺度で作られた罹病統計はないので,残念ながら小児疾患の変遷を,客観的に明示することは出来ない.同じ施設での年次的な変化の報告はいろいろあるが,これも一般的な傾向を示しているとは考えにくく,たとえば大学病院での統計は決して一般に当てはめるわけには行かない.感染症については,昭和56年7月から全国的なサーベイランスシステムが発足しているので,ある程度までは全国的な傾向がとらえられるようになったが,これも限られた病気についてのものであり,しかもまだ調査期間も短い.
したがって長期間にわたる小児疾患の変遷について述べようとすれば,いろんな資料を寄せ集めて,そこから傾向を見つけ出すしかないので,ある程度は主観が入り込むのも止むを得ない.それでここでは,筆者の小児科医としての生活が始まった第二次世界大戦後,大体昭和20年代と,こんど停年退官して,一応小児科の第一線から退くことになる現在,昭和50年代との比較を,自身の経験を通じて述べさせて頂くことにする.
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