特集 アルコール問題
アルコール依存症の専門外来
小杉 好弘
1
Yoshihiro KOSUGI
1
1小杉クリニック
pp.797-801
発行日 1983年12月15日
Published Date 1983/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206792
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■はじめに
つい最近まで,アルコール依存症の治療は精神病院への隔離を主とし,しかも不祥事件を防ぐことを目的として少人数ずつを分散させ,精神分裂病者等と一緒に混合収容するのが普通であった.
このような状況の中で昭和38年に国立久里浜病院にアルコール依存症の専門病棟が設立され,そこで試みられた集団療法を中心とした開放による治療の成果は,我が国のアルコール依存症の治療の歴史の上で画期的なものであった.その後,全国各地の,主として私立の精神病院において,久里浜病院の方式を見習った専門病棟化がすすみ,最近では一部の地域にアルコール依存症のみを治療対象とした専門病院も設立されるようになった.過去20年の間に精神病質や性格異常と烙印を押された時代の,治らない病気としてのアルコール依存症のイメージから,社会復帰が可能な治しうる病気としてのイメージの転換が次第に定着しつつある.治療の飛躍的な発展のうらに,病院の治療構造の変化もさることながら,それにも増して,昭和40年代のはじめ頃から急速に発展してきた治療の自助集団である断酒会(最大規模の組織は全日本断酒連盟)やA. A(匿名断酒会)の活動が大きな役割を果たしたことをあげねばならない.
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