特集 肺がん
疫学からみた肺がんの現状と動向
富永 祐民
1
,
黒石 哲生
1
Suketami TOMINAGA
1
,
Tetsuo KUROISHI
1
1愛知県がんセンター研究所疫学部
pp.148-155
発行日 1983年3月15日
Published Date 1983/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206661
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■日本における肺がんの現状と動向
日本における肺がん死亡の推移をみると,第二次世界大戦直後の1947年には全国で僅か768名であったが,その後現在に至るまで急激に増加し,1981年には全国の肺がん死亡は22,790名に達した.粗死亡率からみると,1947年には人口10万人当たり男1.4,女0.6であったが,1981年には男28.9,女10.3とそれぞれ男で20.6倍,女で17.2倍に上昇した.年齢訂正死亡率(1935年の日本人口を標準人口として計算)からみても,肺がん死亡率は1947年に人口10万人当たり男1.3,女0.6であったものが1981年には男15.9,女5.7とそれぞれ男で12.2倍,女で9.5倍に上昇している1〜3)(表1).
肺結核は過去においては主要死因であったが,抗結核剤の出現,栄養改善,結核検診の普及により死亡率,有病率ともに1950年頃から急激に低下し,1973年には肺がん死亡(全国で12,856名)が結核死亡(全国で11,965名)を上廻るに至った.1981年現在,肺がん死亡は全国で22,790名であるに対して結核死亡は全国で5,693名(肺がん死亡の25.0%)となっている.ただし,これは主として結核の致命率の低下によるもので肺結核の新規登録率は1981年現在なお6万名を越えている2,3).
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