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はじめに―大学生のメンタルヘルスと休学,退学,留年問題
精神疾患に罹患すると社会での適応は悪くなり,勤労者では欠勤,休職,退職などの問題が生じる。大学生のメンタルヘルスの諸問題は,留年,休学,退学などの就学状況に現れやすい。それゆえ,就学状況の現状と動向を知ることは大学生のメンタルヘルスの実態を把握する一助となり,学生支援に重要な手がかりを与える。
意欲減退学生,スチューデントアパシーの問題は,大学生のメンタルヘルスにかかわる者にとって深刻なテーマであり続けてきた。時代とともに,フリーター,ひきこもり,ニートなどの呼び名で話題となってきたが,休学,退学,留年学生の中にこのような問題を抱える学生が多くみられる。さらに自殺その他の精神疾患もこの中に認めることは稀でない。支援の必要性が最近特に注目されるようになった発達障害の学生も含まれる可能性がある。一方,休学,退学,留年は,大学運営上も無視できない問題であり,私立大学に限らず,独立行政法人化後の国立大学でも重要課題となっている。退学による授業料収入の減少は,経営面で逼迫した課題となるが,学生サービスという面からも,不健康な状態で休学,退学,留年する学生が多いことはマイナスである。
大学への全入時代と言われるようになってから久しい。4年制以上の大学への進学率は上昇を続け,少子化による18歳人口は減少を続ける。学力低下,大学の大衆化は必然である。女子の進学率は依然として男子より低い。さらに,科学技術の目覚しい発展の結果,それを身に付けるべき修行期間が長引き,青年の遅い自立を招いた。現代の大学生は昔と比べて幼稚であると言われるのもやむを得ない。
対人関係面での脆弱さも指摘される。自己主張できずに,指示に従わないことで反抗を示す受動攻撃性も認められる。まさにIT革命と言えるようなIT(information technology)の普及により情報収集力が高まり,それはコミュニケーションのあり方にまで変化を及ぼしている。また,景気悪化による影響は最近特に深刻である。
このように社会変化のさまざまな要素が大学生の就学状況やメンタルヘルスに影響を与えている。
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