研究
オックスフォード レコード・リンケージ—英国の一地域における疾病流行の把握および医療サービスの分析と調整
鏡森 定信
1
Sadanobu KAGAMIMORI
1
1富山医科薬科大学医学部保健医学教室
pp.775-781
発行日 1982年11月15日
Published Date 1982/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206613
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わが国では脳卒中が昭和26年以来死亡率の第1位を占めてきたが,その死亡率が近年著しく減少傾向を呈したことにより,悪性新生物が最も高い死亡率を示す時代に至った.悪性新生物はかなり長期にわたる前ガン状態の後に進行し,症状を呈するようになること,発ガン物質による暴露から発症までの潜伏期間が10〜30年に及ぶ例があることなど,非常に長い,しかも症状のない時期を経過して発症することが特微である.疾病の如何を問わずあてはまることであるが,流行病に対してはまず罹患者を治療することであり,最も有効な治療法が駆使される.未罹患者に対しては予防対策を講じるために原因の解明が3つの研究方法,すなわち臨床データの分析,実験的研究そして疫学的研究によりおこなわれる.しかし,悪性新生物の疫学的研究では,前述した悪性新生物の発症に至る経緯の特異性などから,記述疫学による疾病の流行把握を発生率によっておこなうことはきわめて困難である.
わが国では現在13の道府県でガンの登録事業がおこなわれており,悪性新生物の流行把握に関して重要な情報が提供されている1).この事業を全国に普及することは,悪性新生物の疫学的研究のみならず医療サービスの分析と調整の面からも焦眉の急であるが,一方ではこのような悪性新生物のヒト集団における流行研究を,個々の病気の登録による把握から,患者ごとに病気をリンケージさせての把握へと進めることもきわめて重要である.
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