特集 学校保健の今日的課題
児童・生徒の体力・運動能力の現状
松浦 義行
1
Yoshiyuki MATSUURA
1
1筑波大学体育科学系
pp.668-675
発行日 1982年10月15日
Published Date 1982/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206593
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戦中,戦後3〜4年間の栄養事情の極端に悪い時期における児童・生徒の体力・運動能力の低下の時代からぬけ出して,発育加速化現象が生じ,昭和45年以降は栄養事情の問題は,不足から摂取熱量と消費熱量のバランスの問題に代わり,運動不足による体力低下が問題として語られるようになってきた.確かに形態とくに身長に代表される発育は逐年毎に増加の一途をたどり,かつ,以前の日本人的体格の特徴の一つである短い脚長と長い胴長というプロポーションも次第に変化しつつある.このような児童・生徒の体格の変化は彼等の生活空間の変化とともに生起し,それにつれて,体力・運動能力も変化してきている.
日本では,昭和39年以降毎年文部省は小学校5年生以上の児童・生徒の標本に対して,体力・運動能力の調査を実施し,毎年10月10日に体力・運動能力調査報告書として発表している.日本人児童・生徒の体力・運動能力の事情を知るには,この調査は標本数が大であり,かつ比較的,抽出された県が日本全国にまたがっており,都市,農漁村にも標本はまたがっていて,都合がよいと考えられる.この意味から昭和56年度の報告書(昭和55年度調査結果)を手がかりに,現代の児童・生徒の運動能力について考察をすすめることにする.
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