資料
フィンランドのプライマリー・ヘルス・ケア(上)—フィンランド社会保健省国家保健委員会
山根 洋右
1,2
,
吉田 暢夫
1,2
,
中川 昭生
1,2
,
牧野 由美子
1,2
1島根医科大学環境保健医学教室
2フィンランド社会保健省国家保健委員会
pp.420-426
発行日 1982年6月15日
Published Date 1982/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206539
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翻訳にあたって
フィンランドは,スウェーデンとならんで社会福祉国として先進的とり組みを展開しており,社会保障・社会福祉はもちろん,医療・保健活動にも多くの示唆をうることができる.
フィンランドの社会福祉は,すべての国民に適度の生活水準,社会保障,充足感を与え,生活水準の引きあげと均等化,さまざまな危険が惹き起こす不安から人々を守ることに力がそそがれている.このような真に国民の要求に応じた手厚い社会福祉を土台としたフィンランドの保健医療は,着実に社会的進歩に貢献している.他方,日本では,「福祉みなおし」「日本型福祉」など社会福祉の後退,形骸化がおしすすめられ,深刻な医療荒廃の現状が露呈し社会的問題とさえなっている.このような現状を放置したまま,最近とくにプライマリー・ヘルス・ケアがいろいろ論議されている.憲法に定められた国家の国民に対する「基本的人権としての健康」を守り増進する責務がないがしろにされている現在,世界一流の社会福祉国家におけるプライマリー・ヘルス・ケアを検討し,多くの問題をかかえつつも,総合保健活動の理念を追求している国々の努力を知ることは,日本の公衆衛生における混迷の根本的原因の所在を明らかにするうえでも意味あることと思われる.
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