講座 公衆衛生学の最近の進歩・9
環境保健(2)—環境汚染および環境衛生制度
和田 攻
1
Osamu WADA
1
1群馬大学衛生学
pp.711-719
発行日 1981年9月15日
Published Date 1981/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206385
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■はじめに
最初に戦後の環境保全問題をふりかえってみると,第二次大戦の荒廃から復興を目指した1950年代と,経済成長を目指し開発が中心となり,反面,公害を含め,環境と健康にかかわる問題が一斉に顕在化した1960年代,それをひきついで環境の受容力が無限でなく,放置すれば人類の生存の基礎となる自然がとりかえしのつかないまでに破壊され,人類の運命を危険におとしいれるという反省,すなわち経済成長の歪みに目覚めた1970年代とつづき,新たな1980年代を迎えようとしている.
このような環境汚染の進行に対し,1967年には公害対策基本法が制定され,1970年には同法をはじめとする公害関係諸法令の改正・整備が行われ,さらに1972年には自然環境保全法が制定され,近い将来,環境影響評価法も制定されようとしている.このように1980年代は,単に個別発生源のみならず,総量規制をもって環境を保全し,さらに将来環境汚染の可能性ある開発行為などをあらかじめ予測し保全に万全を期すという総合かつ予防的な対策が進められる年代といえよう.さらには,単なる公害の防止や自然環境の保全だけでなく,人びとの心にうるおいとやすらぎをもたらす真に豊かな環境をつくるべく長期的かつ総合的な環境対策が望まれる時代でもある.
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