特集 アジア諸国の産業保健
環境管理
小木 和孝
1
Kazutaka KOGI
1
1労働科学研究所
pp.339-344
発行日 1980年5月15日
Published Date 1980/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206087
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■はじめに
産業保健のなかにおける環境管理は,生産活動そのもの,職場そのものの設計のされ方に左右されるから,産業保健活動としては工学的技術との接点が最も大きいといっていいだろう.産業保健が組織立って行なわれていなくても環境管理はそれなりにやられているものだし,また,いざ組織立ってきちんと環境管理をやろうとすると,工学技術や経済性の壁が厚いことにもなる.この事情は,アジアのどの国をとっても同様だと考えられる.ましてや,3年ごとの地域学会に出てくる報告から,この現実にやられている環境管理なり,その壁なりを知ることはとても難しい,ソウルで開かれた第9回アジア産業保健会議の「環境管理」(Environmental Control)のセッションに出て,まず第一に感じたのは,この点だった.
この印象は,アジア産業保健会議だけからのものではなく,ここ数年アジア諸国をいくつか回って見た経験からも感じていた点である.ただ大づかみにいって,環境管理が決して組織立っては行なわれておらず,その管理技術の実情がお互いに十分交流され合うことが乏しく,国際的な協力もいくつかの試行的なものにとどまっている,といえそうである.こと環境管理になると,日本でも産業保健のなかで正当に位置づけられているとはいいがたい,困難の大きい分野であるが,アジア諸国では,それにもまして壁が厚い状況にあることは否めない.
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