臨床医の産業医活動・3
作業環境管理(1)
林田 一男
1
Kazuo Hayashida
1
1王子診療所
pp.1022-1023
発行日 1992年11月15日
Published Date 1992/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900654
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作業環境管理の意義
環境管理は,健康管理と作業管理とともに職場の労働衛生管理の3本柱と言われている(最近はこれに衛生教育を加える意見が多い).労働衛生の現場で環境管理が本格的に取り上げられたのは,1958年に当時大流行したヘップサンダルを製造中の家内工業で,ゴムノリに含まれていたベンゼンによって,多数の女子労働者が再生不良性貧血で倒れ死亡者まで出た事故がきっかけであった.有機溶剤中毒予防規則,特定化学物質等障害予防規則,じん肺法などがその後相次いで施行されたのである.皮肉にも,わが国の環境管理推進の最大の貢献者は,そのサンダルを流行させた映画「ローマの休日」主演のオードリ・ヘップバーンと言えなくもない.
職場における環境管理の目標について,労働省の指導は,当初は単に「有害環境の排除」であったのが,その成果が上がるにつれて「至適環境の維持」になり,ついに現在は「快適な環境づくり」を目指すことに変わってきて,今回の安全衛生法改正(1992年5月)では,それを具体的に法に明示するまでになっている.環境汚染と健康の,量,反応関係を示した図1で,B,C,D点以上は健康障害を起こすレベルと考えると,B点以下では健康,A点レベルが至適環境,そして快適環境はK点レベルではないかと考えられるが,なかなかシビアな設定である.
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