特集 法改正の動向
労働安全衛生法の管理構造のもつ問題点
小木 和孝
1
1鉄道労働科学研究所
pp.505-509
発行日 1972年8月15日
Published Date 1972/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204529
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労働災害度数率の分布をみると,ゼロのところもあれば,100万時間当たり50以上とか100以上とかのきわめて危険な職場もある.その場合,災害ゼロと報告された職場では安全衛生の問題がないかというと,決してそうは思えない.そこにも安全上,健康上の問題が山積しているにちがいない.災害ゼロという数字自体が作られた数字かもしれない.一方の危険職場でも「安全第一」の標語ばかりはかかげられていて,そこに安全管理の方がまったくゼロだというわけではないであろう.何が安全かということは,こうしてみるとむずかしいものである.
しかし,何が安全で衛生的な職場要件かをみる上で,たった1つはっきりしていることがある.それは,そこで被害者となるのは労働者であり,したがってまた現場の危険有害な箇所を最も詳しく知っているのは労働者だということである.被害者の立場にたたない公害対策がまったく無意味であるのと同様に,労働者の,十分な知識と有効な助言にささえられた意見の反映なしには,労働安全衛生の十分な対策はたたない.だから,企業主や行政者や安全技術者の立場にたっての一方的な安全衛生「管理」を押し進めることは大いに疑問である.
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