発言あり
洗剤と水質保全
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pp.301-303
発行日 1980年5月15日
Published Date 1980/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206078
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合成洗剤の追放だけではすまない——総合対策を
過去20年間における合成洗剤の普及にはめざましいものがあるが,このように合成洗剤が広く使われるようになったのは,これが石けんに比べて格段に洗浄力がすぐれているためである.この強力な洗浄力は,1つは界面活性剤の作用であり,もう1つはリン酸塩の作用であるが,すぐれた洗浄力のもとである洗剤成分が,2つとも水質汚染とのかかわりで問題にされたのは皮肉である.
さて,合成洗剤による水質への影響が最初に取り上げられ,その犯人として摘発されたのは,界面活性剤のアルキルベンゼンスルフォン酸塩(ABS)であった.この物質は,水中の微生物による分解を受け難く,そのため残留ABSの生物に与える毒性が懸念されたのである.問題のきっかけは,河川の堰や下水処理場で,泡立ちが異常に目立ち始めたことに気づいてからであるが,その後の研究・調査によって,現実に水中に残留している程度のABSでは人体あるいは魚介類に影響はなく,また下水処理の過程にも影響を及ぼさないという結論が出された.しかし,泡の発生という問題は残された.そこで,生分解性の高い界面活性物質の開発が進み,線状アルキラートスルフォン酸(LAS)が,ABSに代わって用いられるようになり,これで洗剤による水質汚染は解決したようにみえた.
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