特集 公衆衛生における栄養
生活科学における栄養—食生活学への期待と栄養学研究のあり方を考える
木村 修一
1
Shuich KIMURA
1
1東北大学(農学部)栄養化学
pp.97-102
発行日 1980年2月15日
Published Date 1980/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206022
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■はじめに
まず,初めにお断りしなければならないことは,編集子から与えられたテーマとは内容が大分ずれているということである.筆者は現在,生活科学をやっている者ではなく,栄養学の一研究者である.したがって,表題のテーマを論ずる資格に欠けているのである.ここで述べようとしていることは,一口で言えば「食生活学」ともいうべきものへの期待と,栄養学をやっている者の反省といったものになろう.それにもかかわらずあえてペンをとったのは,まず第一に,食生活をよりよいものにするために,栄養学がどれだけ寄与してきたのであろうかという,筆者の中にあった疑問をベースに,今後,栄養学の進むべき方向を考えてみようと思ったこと,第二に,かつて生活科学とは何ぞや,生活科学における食の研究はどうあるべきか,等々について,ささやかながら筆者らのグループがアプローチを試みたことがあったが,それらに関するディスカッションの要点などをここに述べておくことが,今後のこの面での議論に役立てばという気持ち,そして第三には,日本における食生活研究がどのような人,グループによって推し進あられてきたか,その歴史を振り返り,これからの食生活学とでも言うべきものの今後のあり方を考えてみたいと思ったこと,これらの事由からにほかならない.
もちろん,筆者の独断も多く,本論文の内容についての責任は,すべて筆者にあることは言うまでもない.
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