特集 心身障害児
心身障害児対策の現状と課題
尾村 偉久
1
1(東京)国立小児病院
pp.680-687
発行日 1979年10月15日
Published Date 1979/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205939
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■はじめに
わが国の心身障害児対策は,今次大戦の終結を迎えるまでは,富国強兵の国策に覆われて皆無に等しく,すべて個々の家庭の問題として自然淘汰の流れに委ねられていたと言っても過言ではない状況であった.戦後,経済復興,国民生活の尊重という社会の潮流とともに,福祉国家建設の基本思想のもとに,社会的・生活的な弱者——母子,生活困窮,心身障害,老齢など——に対する対策が急速に進展,整備されてきたのであるが,心身障害児対策もその流れに乗って,施設対策を主として著しい進展を遂げてきた.しかしながら,わが国はもとより,世界の多数の国々が,数年来の石油資源問題以来,従来の高度経済成長から減速安定経済社会に転換せざるを得なくなり,政策転換のシワ寄せが,ややもすると福祉政策,特に単純に社会的な負担と軽視されがちな心身障害対策に転嫁されることを惧れるものである.
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