FOCUS
わが国における麻疹対策の現状と課題
駒瀬 勝啓
1
1国立感染症研究所ウイルス第3部
pp.1046-1048
発行日 2016年10月1日
Published Date 2016/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206631
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
麻疹は麻疹ウイルスによる,発熱,発疹を伴う急性の呼吸器感染症である.麻疹ウイルスは空気感染,飛沫感染などで伝播し,その感染力は人の感染症のなかでも最も強いものの一つである.麻疹に対する十分な免疫をもたない人には,老若男女を問わず,容易に感染する.感染者のおよそ1/3が合併症を起こし,時として死亡の原因となる.また,亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる致死性の脳炎を起こすこともある.2014年においても,世界でおよそ11万人が麻疹によって死亡したと推定され,いまだ人類に深刻な影響をもつ感染症である1).
2000年の国連ミレニアム・サミットで,2015年までに達成すべき目標の一つとして,乳幼児死亡率の削減が掲げられた.2000年当時,麻疹による死亡者数は54万人を超え,その多くが5歳未満であったこと1),また効果,安全性,経済性に優れたワクチンが存在することなどから,2001年から世界保健機関(World Health Organization:WHO)を中心として,“Measles Initiative”と呼ばれる麻疹の排除を目指す取り組みが開始された.
本稿では,わが国における麻疹排除の状況と今後の課題について述べる.
Copyright © 2016, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.