今月の本
川村 佐和子・木下 安子・別府 宏圀・宇尾野 公義 共著『難病患者の在宅ケア』—ALS患者の克明な闘病記録
西 三郎
1
1国立公衆衛生院
pp.609-610
発行日 1978年9月15日
Published Date 1978/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205684
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本書は,難病のなかの難病といえる筋萎縮性側索硬化症(ALSと略す)の患者,井伊政幸氏の発病から死に至る6年10カ月の克明,詳細な闘病記録を中心として編まれている.まえがき(宇尾野公義)に,患者が病名を知り,その予後が不治であり,病状が次第に悪化することを悟り,病気を受容するまでの苦悩——E. キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』(読売新聞社刊)に示された衝撃,否認,怒り,抑うつ,取り引きを経て受容に至る過程——が,きわめて具体的に記録されている.
第1章——「事例紹介」では,言語障害によるコミュニケーションの困難を種々の工夫によって乗り越え,最終的には,気管切開,経管栄養,レスピレーターの使用と,医師,看護婦,保健婦,理学療法士,ケースワーカー,ボランティア,さらには患者会の人々などに支えられて,最期まで人間として生き,その生涯を閉じていった凄絶な闘病のなまなましい実態が,献身的・超人的な看護をされた井伊なか子夫人からの聞き書きを中心としてまとめられている.
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