特集 アルコール中毒
諸外国のアルコール症対策の歴史とわが国における問題点
河野 裕明
1
1国立療養所久里浜病院
pp.318-323
発行日 1978年5月15日
Published Date 1978/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205606
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はじめに
飲酒問題は人間の普遍的な精神衛生の問題であり,それを基礎として発生するアルコール症問題は,生物学的な身体的障害を地盤としながらも,その人の住む広範な社会・文化的背景の影響を受け,その人独自の歴史の中に深刻な極印を押してきた.要するにアルコール症とは,全人間存在の構造を包括した現象なのである.
したがって,WHOもアルコール症を,人間の「自ら求めて」酒を求めるその自発性から,その人の生活している社会・文化的風土およびその薬物エタノールの作用を包括した人間の行動的な動態としての疫学的—生態学的概念をもって定義している.
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