特集 公衆衛生院40年の歩み
公衆衛生院における研究の動向
環境保健
鈴木 武夫
1
1国立公衆衛生院
pp.250-253
発行日 1978年4月15日
Published Date 1978/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205592
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はしがき
人の健康と環境との関係の探究は,古くから行われていた.衛生学は,もともと人と環境との関係を健康や疾病との観点から研究し,実践を行って来たものであるともいえる.この場合の環境は,SCOPEの分類によるところの,物理・化学環境,生物環境,社会経済環境,そして自然環境を含むすべての環境のことである.最近の一般的表現でいえば人間環境のことであり,広範囲にわたるものである.したがって,公衆衛生の研究のすべては,環境全般との関係で説明し得るものである.
しかし,現在の日本で環境保健といえば,非常に狭い範囲の問題を取り扱うようになっている.いわゆる公害現象,すなわち環境汚染と人の健康との関係,さらにはもっと狭く,環境汚染によって生じた健康障害を取り扱うものとさえ解釈される場合がある.国際的に通用する言葉である"Environmental Health"と比較して,わが国の環境保健の内容はあまりにも狭く考察されていると思うのである.
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