特集 公衆衛生への提言
教育・研究
社会科学的素養に裏づけられた医療従事者の養成を
姉崎 正平
1
1病院管理研究所
pp.542-543
発行日 1976年8月15日
Published Date 1976/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205241
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筆者は社会(科)学の立場から医療や健康の問題を勉強し始めた者である.したがって,医療の中核となる医療技術の訓練や実践の経験がなく,それから導かれ,またその基礎となる医学理論の体系的知識に欠けている.しかし,医学・医療の形成・発展,そして人びとの健康・傷病構造は社会的条件によって規定され,また,それらは社会の生産力,ひいては経済・政治・文化・思想を規定する——,ここに,医療や健康に対する社会科学の貢献は必要かつ重要であると確信する.
そこで,医療関係者と社会科学者との交流や共同研究が望まれる.だが,それはあまり容易ではない.というのは,医学・医療の専門分化の進行により,医師をはじめとする医療関係者がますます狭い専門に閉じこもりがちであること,さらに,臨床場面における医師(専門家)と患者(素人)の関係が,敷延され,研究や行政の場にももちこまれがちであり,最近の医学部卒業者の臨床志向の傾向もこれを助長するのではないかと思われることのためである.
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