特集 公衆衛生への提言
政策・行政
公衆衛生は解体と再構築が必要
大渡 順二
1
1保健同人
pp.529-531
発行日 1976年8月15日
Published Date 1976/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205235
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行政の固定化とセクショナリズム
厚生省の『厚生統計要覧』でみると,「公衆衛生」という項目には,「栄養・体位,伝染病・食中毒,結核,ライ・性病,成人病,精神・優生保護,母子保健,歯科衛生,原爆医療,公害,上下水道・清掃,食品衛生,環境衛生,保健所」が列挙され,「人口,死亡,結婚,医療,薬事,社会福祉,障害者,老人福祉,社会保険(医療・年金),公園,社会保障」などのテーマは,公衆衛生から区別されている.一応区別するのは統計学上の必要からかもしれないが,これからプロジェクトごとに新しい順列と組み合わせを築く努力と示唆は,何ら試みられていない.ここに,公衆衛生だけでなく,厚生行政,いや,日本の行政一般の固定化とセクショナリズムの土壌があるように思う.こうした厚生統計からは,行政の壁を越えた,新しいプロジェクトが生まれるはずはない.統計は統計でいいから,まず現在と未来に必要なプロジェクトを大胆に設定する作業を,私たちの第一関心事とする努力が必要じゃあるまいか.これには,厚生当局だけでは駄目で,各行政機関を動員し,これに国民的な頭脳と努力が協力する必要がある.早い話が,私が家庭医学のシリーズに厚生省の協力を求めた際,厚生省に,どの部局にも「性」の担当がないのに驚き,同時に,厚生省が狼狽したことを覚えている.性は自然現象だと思っていたらしい.
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