研究
窒素酸化物の生体への影響について—特に肺の脂質代謝への影響を中心として
嵯峨井 勝
1
1国立公害研究所環境生理部
pp.483-489
発行日 1976年7月15日
Published Date 1976/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205221
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はじめに
昭和50年12月26日,環境庁は昭和49年度『日本の大気汚染状況』に関する報告書1)を発表した.これによると,わが国における近年の大気汚染の様子は図1に示すように,二酸化硫黄(SO2)による汚染は昭和42年より確実に減少しつつあり,その年平均値は環境基準値(1時間値の1日平均値が0.04ppm以下)の約半分になっており,大気汚染防止法に基づく効果が現われていることがわかる.一方,二酸化窒素(NO2)の汚染は年々徐々に増加してきている.図1からもその年平均値が環境基準値2)(1時間値の1日平均が0.02ppm)の1.7倍程度に達しており,53年完全実施までに達成することは非常に難しい状態にあることがわかる.
NO2はその生体への影響がSO2に比べてはるかに強いことと同時に,その発生防止技術が困難で未解決の問題が多いことを考え合わせると,大気汚染物質の中で現在最も注目すべき物質,といっても過言ではない.
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